重量偏差試験

 本試験法は含量均一性試験と本来同じ目的を持つ試験法であり,簡便な代法と考えられる.適用できる製剤は,原則として製剤の重量偏差が主薬含量の偏差に比例している場合に限られる.

 

 この方法は製剤の重量の偏差を含量の偏差とみなし,個々の製剤の重量を測定することにより,製剤の主薬含量の均一性を推定する試験方法である.従って,含量均一性試験を適用した場合にはこの試験法を適用しない.また,定量法に規定する方法を成分含量の測定法として用いることにより,この試験法に代えで含量均一性試験法を適用することができる.

 

 本剤30個をとり,初めに10個についてその重量を精密に量り,判定値を計算するとき,この値が15.0%を耜えないときは適合とする.判定値が15.0%を超えるときは,更に20個について同様に重量を測定し,2回の試験の合計30個についての判定値を計算するとき,この値が15.0%を超えず,かつ個々の製剤の含量の推定値と表示量の偏差が表示量に対し25.0%を超えるものがないときは適合とする.

 

(2)硬度,摩損度が適切であること

 

 これらの性質が適切でなければ製造,運搬や取り扱いの過程において錠剤が破損したり,摩損して,正確な服用量を常に期待することができない.硬すぎれば今度は適切な崩壊が期待できない.錠剤の硬度は崩壊性との関連において考慮されるべきである.一般に錠剤の硬さは指先で折れ(梢円形の場合),多少の衝撃ではこわれない程度のものでなければならない.硬度の測定は,モンサント硬度計,エルウエカ硬度計,シェロニガー硬度計などが使われ,一般的に3~7 kg程度の硬さが適当てあるとされている.

 

(3)崩壊性および溶出性が適切であること

 

 錠剤など,経口囚形製剤の崩壊性および溶出性が,服用後のバイオアベイラビリティを左右し,薬物効果の発現に影響を与えることは,種々の研究によって明らかにされている.

 

剤皮を施した錠剤についての崩壊試験法と可否の判定の心卒が記載されている.近年は前項で述べたように各種の製剤に工夫がなされるようになり,実際にこれらの錠剤が医療の場で使用されている.このようなものについては,それぞれの錠剤の特性を見極めて適当な試験法を適用する必要がある.

 

 崩壊試験法は通常囗局に規定されている装置,操作によって行われる.

含量均一性試験

 この方法は,個々の製剤の主薬の含量を,日局の医薬品各条に規定する方法で定量することにより,製剤の含量の均一性を試験する方法である.医薬品各条に特に規定がない場合は,定量法に規定する方法,または他の適当な方法を成分含量の測定法として用いることにより,この試験法を行うことができる.別に規定するもののほか,次に示す試験に適合する.

 

 本剤30個をとり,初めに10個について個々の製剤中の主薬含量を測定する.判定値を計算し,その値が15.〔〕%を超えないときは適合とする.判定値が15.0%を超えるときは,更に残りの20個について同様に試験を行う.2回の試験を併せた30個について判定値を計算し,この値が15.0%を超えず,かつ個々の製剤の含量と表示量の偏差が表示量に対し25.0%を超えるものがないときは適合とする.

 

 表示量から25%以上の偏差を示すものは重欠点の不良品とみなし,そのようなものを含む製品は受け入れ難いことをこの規定は示している.

錠剤の条件

 

 錠剤の成分骨量,成分の変化,崩壊性および溶出性に関しては,薬物の効果発現に重要な影響を及ぼすので,薬剤師は錠剤の品質管理を常に留意して,不審な点があれば直ちに試験できるように設備と技術を備えておかねばならない.また,ひびわれ,変色など外観上からも品質異常が推定できる場合もあるので,調剤時は常に細心の注意を怠らないことが必要である.

 

 ここでは錠剤の品質管理上必要な試験法について記載するが,錠剤の試験はこれらにとどまらず,あらゆる角度から慎重に行われるべきものである.また個々の錠剤の特性を理解することは,患者が正しい服薬,保管を行うための服薬指導情報としても重要である.

 

(1)含量の変動および重量偏差が小さいこと

 

 日局では錠剤の成分の含量および重量偏差の変動の許容範囲を定めている.錠剤の含量はこの許容範囲にあるべきことはもちろん,その範囲にあっても変動幅はなるべく小さく,均一な含量が保持されているべきである.変動範囲の大きい錠剤からは一定の薬物効果は期待できない.

 

 含量均一性試験(日局)は,エチニルエストラジオール錠,ジゴキシン錠,プレドニゾロン錠,ニトログリセリン錠などに適用される試験法で,錠剤の個々の主薬成分の含量の均一性を試験するものである.この試験は主薬含量を問題としており,製剤中の薬効を保証し,薬剤投与量の正確性を確保する,すなわち治療の質を保証するための計量試験として重要である.

口腔用錠剤

 

 A)バッカル錠

 

 口腔内の臼歯と頬の間に挟み,唾液でゆっくりと薬剤を溶解させて口腔粘膜から主薬を吸収させるもの.

 

 B)舌下錠

 

 舌下で急速に溶解させて,口腔粘膜から速やかに吸収,効果を発現させるもの.

 

 C)トローチ剤

 

 口中で徐々に溶解または崩壊させて,口腔や咽喉粘膜に対して殺菌,収れんなどの局所作用を長時問作用させる経口投与剤である.

 

 D)付着錠

 

 本剤は主剤を含むイ寸着層と付着後容易に溶解消失する支持層の二層となっている口腔粘膜貼付剤である.付着層は指先で軽く口腔粘膜面の患部へ押さえれば容易に付着し,唾液により膨潤して皮膜を形成して患部を被覆保護して主薬を持続的に患部に浸透させる.

 

(3)非経口用錠剤

 

 無菌的に製されたもので用時,注射用水に溶かして注射剤とする注射用錠刑や植込錠剤がある.

 

(4)外用錠

 

 溶解錠(用時指定された液に溶かして,点眼 うがい,消毒,洗浄などの外用に用いる錠剤),往錠などがある.これらは外用薬用の薬袋で交付される.

 

持続性錠剤

 不溶性あるいは難溶性物質を利用して,薬物の拡散あるいは溶解を制御して,1[回の服用によって一定時間一定量の薬物が連続的に放出されるように設計されたものである.徐放性とか持効性とも呼ばれる.これら徐放性製剤は,顆粒剤,カプセル剤を含めてこれらの製斉ll設計を理解することが好ましい.

 

 ①ワックス・マトリックスWax Matrixes : 疎水性・親水性の放出抑制物

  質である基剤のマトリックス中に薬物を分散させて単純に打錠したのも

  ので,マトリックスから,またはその崩壊により徐々に薬物が放出,され

  る錠剤である.

  [市販医薬品例]ヘルベッサー錠,スローケー,スローフィー,プロタノール

  S錠,MSコンチン錠,テオドール綻50

 ②グラデュメットGradumets : 多孔性の不溶性プラスチックマトリック

  スに包含された薬物が消化管液に拡散して放出されるタイプの錠剤であ

  る.

 [市販医薬品例]フェログラデュメット

  不溶性物質を基剤としてではなく皮膜として用いた徐放性皮膜錠(市

 販医薬品例 フェロリタード),また多孔性高分子皮膜で被包し,皮膜孔か

 ら薬物が拡散する微透析顆粒を充てんしたカプセル製剤などがある.

 [市販医薬品例]ニトロールR,インデ`ラルLA,スロービット,テオロング

 錠(微透析顆粒を含有する錠剤)

③レペタブRepetabs : 腸溶性コーティング錠の外側を胃内で溶解する肖

 溶屑(速溶層)で覆った複層錠である.

 [市販医薬品例]ポララミン復効錠,トリラホンニ層錠

④スパンスールSpansules : コーティング層の厚さが異なり薬物の放出時

 間に差のある数種の顆粒をカプセルに充てんした製剤である.

   通常,胃溶・腸溶性混合顆粒,または速溶・遅溶性混合顆粒を充てん

  したカプセル(市販医薬品例 ペルジピンLA,セパミットーR, L-ケプラー

  ルなど)をいうが,類似形として速溶性皮膜錠と徐放性皮膜錠を一緒にカ

  プセル充てんした製剤(市販医薬品例 ベトリロール一口がある.

 ⑤スパンタブSpantabs : 速溶層と徐放層を重ね合わせた二層からなる錠

  剤である.

 ⑥ロンタブLontabs : タイムスパンTin!espan,エクステンタブExtentab

  とも呼ばれる.速溶性の外殻層と徐放性の内殻層を,二重あるいは三重

  にもつ錠剤である.

  L市販医薬品例]カルビスケン一R

 ⑦スペイスタブSpacetabs : 徐放性皮膜によりコーティングされた顆粒と

  速放性のマトリックス(つなぎ部分)からなる錠剤である.

  [市販医薬品例]フランドル

 ⑧レジネートResinates : イオン交換物質に薬物を結合させて消化管液中

  のイオンと薬物を徐々に交換させて放出することを意図した製剤であ

  る.

  [市販医薬品例]ハイスクミン錠

特殊錠剤

 ①そしゃく(チュアブル)錠:投与量の多い錠剤を,かみながら唾液とと

  もに服用できるようにしたもので,幼児でも服用できる.

 ②発泡錠:沸騰錠とも呼ばれる.炭酸水素ナトリウムと有機酸(クェン酸,

  酒石酸,リンゴ酸など)によって,水中で炭酸ガスを発生させて溶解性

  を高め,清涼感をもった水剤として服用するもの.ビタミンを成分とす

  る一般薬にこの種の製剤は多い.

 

 その他,混和して配合することが好ましくない成分を,層を別にして打錠した多層錠や有核錠などがある.また散剤や水剤の調剤できわめて少量の毒一劇薬を秤量する手間を省くための調剤錠があるが,現在は使われていない.持続性錠剤もまた本来特殊錠剤に分類されるが,近年種々のタイプが開発されているので次項にまとめ,さらに個々の製剤の評価(理解)の方法をまとめた.

 

顆粒剤の調剤上の注意事項

 2種の顆粒剤の混合性は,かさ密度や形態が同程度のものであれば混合度がよいが,粒度,形状,かさ密度,配合量などが異なると混合度が悪くなる.顆粒剤と散剤との配合はさらに混合性が悪いので,通例は直接混和,分割,包装をせず,前に掲げた処方例のように2回に分けて分割包装する.

 

 嚥下困難な患者に経鼻肖チューブを用いて医薬品を投与するような場合には,チューブ内でのつまりを防ぐため,やむを得ず顆粒剤を粉砕することがある.しかし,一般には,製剤の目的からいって顆粒剤の粉砕は妥当ではない.特に特殊な製剤技術の加えられている顆粒剤,例えば医薬品の分解防止,苫み,渋みなど不快な味の隠ぺいあるいは医薬品の放出速度の調節を目的としてコーティングなどの製剤加工を施した顆粒剤は粉砕すべきではない.このような顆粒剤のなかには,使用上の注意として[かまずに服用]と指示しているものもある.