透析患者の死因

 

透析患者の死因の第一位は感染症で、死因の24%を占めます。患者さんが高齢化していること、透析療法による免疫機能の低下が原因の一つです。透析患者では気道粘膜の障害も起こりやすく、とくに呼吸器感染症にかかりやすい状態にあります。

 

 透析患者の死因の第二位は心不全で、二二・八%を占めます。透析患者の心臓は、心室が拡人する「拡張型心筋症」によく似た状態を呈し、この原因として透析療法で二日ないし三日おきに生じる間歇的な体液量の増減、尿毒症、副甲状腺ホルモン増加、貧血、高血圧、低栄養などがあげられます。したがって、食塩摂取量やリン摂取量の制限ができ、適切な蛋白摂取量を保ち、ふだんからある程度運動する人では心不全は起こりにくいのです。

 

 第三位はがんなどの悪性腫瘍(九・四%)ですが、脳血管障害と心筋梗塞を合わせた脳・心臓血管障害は一〇・三%と悪性腫瘍より多くなります。腎臓病は動脈硬化の最大の発症原因とされていますがとくに高血圧が強く関連しています。

 

 透析患者の血圧は高くなりがちですが、その理由の一つは透析中の水分除去(除水)が不十分なためです。また透析前は高血圧でも、透析後は正常血圧になったり、あるいは透析中に血圧が人きく低下したりします。透析を受けていない人よりはるかに大きな血圧変動があるため、どの時点の血圧を日安にして血圧を下げるかが難しく、下げ方が不十分になりがちです。『腎臓病の話』椎貝達夫著より