野菜に豊富な抗酸化物質

 

 野菜にはどんな成分が含まれているのでしょうか。

 

 東京女子医大名誉教授の三神美和先生は、毎朝すりおろし野菜を召し上がって、百五歳になった今もお元気です。

 

 たとえば、日本人には大根おろしでお馴染みの人根には、「ジアスターゼ」というデンプンの消化酵素が含まれています。最近の研究では、タンパクや脂質を分解する酵素も含まれていることが解明されてきました。てんぶらに大根おろしが付き物なのも、理にかなっているのです。

 

 さらに、人根の辛味成分である「イソチオシアネート(イオウ化含物)」は、殺菌作用をもち、強力な抗酸化作用を持っています。ソパや鍋ものにそえられる辛味人根などは、その含有量が非常に多いのですが、江戸時代、大根おろしは消化剤であると同時に殺菌剤でありました。強力な抗酸化作用は、がんも防ぐ働きをしていたのです。

 

 大根ひとつをとってみても、これほどがんを防ぐ成分がいろいろ含まれているのです。とくに、活性酸素の害を打ち消す「抗酸化物質」はあらゆる植物に含まれ、ポリフェノールだけでも五〇〇〇種類以上あるといわれています。

 

 「活性酸素」は、遺伝子を傷つけ動脈便化を引き起こし、また老化や慢性病を促進するなど、がんの発生に非常に強く関係しています。ですから、がんを防ぐには活性酸素の害を打ち消す抗酸化物質の働きが、非常に大きい。とくに年をとるほど、体内にあるスカベンジャー(活性酸素の掃除屋)の働きが低下してくるので、食べ物で抗酸化作用のある物質をとることが重要になってきます。

 

 野菜や果物にはポリフェノールや、その一種であるフラボノイドやカロチノイド、レモンやミカンなどかんきつ類に含まれるテルペン類、緑色の色素であるクロロフィル葉酸、タマネギやニンニクに含まれるアリシンなどのイオウ化含物、などさまざまな「抗酸化物質」が含まれています。

 

 最近、「ファイトケミカル」が話題を集めていますが、これは「植物に含まれる抗酸化栄養素」という意味です。

 

 

 発想しだいで、週に十回トマトが食べられる

 

 こうした栄養素を具体的にみていきましょう。

 

 皆さんになじみの深い「ビタミンC」はご承知のとおり、野菜や果物に豊富かつ抗酸化作用の強いビタミンです。

 

 「ポリフェノール」は、植物が光含成を行う時にできる色素や苦味成分の総称をいい、植物の細胞を活性化する働きをしています。身近なところでは、赤ワインやブルーベリーに多く含まれる「アントシアニン」、お茶に多い「カテキン」、人豆の「イソフラボン」などがあります。いずれも、強力な抗酸化作用があることで知られています。

 

 トマトには、だいだい色の色素である「カロチン」と赤い色素である「リコペン」という種類の「カロチノイド」が含まれています。βカロチンは、かつて緑黄色野菜の抗がん作用の本命とみられていた抗酸化物質ですが、いまではリコペンの方がさらに抗酸化作用が強いとされています。

 

 二〇〇一年に、アメリカの国立がん研究所とハーバード人学が行った共同研究があります。

 

 トマトを週に十回食べる人のグループは、トマト嫌いの人のグループに比べて、前立腺がんの発生率が五五%も少ないという結果が出、これは前立腺がんになる人が半分に減ることを意味しています。

 

 週に十回もトマトを食べるなんて無理だ、と思われますか? 毎日トマトジュースを飲んで、あと三回、どこかでトマト料理を食べればいいことです。それほど実現不可能なことでもないのです。