レモンのキレート作用、アミノ酸はビール酵母で

 

 レモンについては、いささか個人的なお話になりますが、私はハチミツレモンなどにして、毎日一個は食べています。これはわが家の日課で、家族五人で月三〇〇個はレモンを消費している計算です。

 

 元気で活躍されている高齢の方には、レモン愛好家が多いのです。第二章で紹介した九重織りの家元・九重年安子さんの食事の中にもハチミツレモンがありましたし、料理研究家の飯出深雪さんもそうです。九十代までご活躍された美容研究家のメイ牛出さんもレモンの愛好家でした。

 

 そんなことから、私もレモンに関する勉強を始めたのですが、家族までレモンを食べるようになったのは、実父の病気がきっかけです。父は八十一。歳の時、量が萎えて動けなくなり、弟の病院に人院しました。食事がとれず、鼻に管をいれて直接胃に流動食を流し込まなければならないほど、衰えていました。

 

 それで私の提案で、朝晩の流動食の中に、レモン一個分の絞り汁を混ぜることにしました。すると二週間後には口から普通食を食べることができるようになり、体力が回復して歩けるようになったのです。食事が口から取れるというのは、きわめて重要なことですが、レモンにはそうさせるほどの力があるのです。

 

 「百聞は一見に如かず」でしょうか、それまで私のハチミツレモンを横目で眺めていた家族が全員、ハ子ミツレモンを飲むようになったのはそれからです(笑)。

 

 レモンに含まれるクエン酸やビタミンCは、疲労回復に効果があることが知られています。しかし、レモンの素晴らしさはそれだけではないのです。レモンには「エリオシトリン」と呼ばれるポリフェノールの一糖が含まれています。これが活性酸素の消去や過酸化脂質の生成抑制に強力な作用を持ち、LDLコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に働きます。抗酸化作用は、当然抗がん作用につながります。

 

 さらにクエン酸は、疲労回復に役立つだけではなく、カルシウムや鉄などそのままでは体に吸収されにくいミネラルを包み込んで、吸収されやすい形に変えてくれます(これをキレート作用といいます)。そのため、カルシウムや鉄の吸収がよくなるのです。

 

 私は、こうしたレモンの成分を安全な形で得るために、わが家にレモンの木を二十本植えました。しかし、植物を育てるのは素人ですし、気候的にも無理があるらしく、一本の樹に年に二個、実をつけさせるのがやっとです。それでも、わが家の庭で熟したレモンはことのほかジューシーで、さわやかな味覚を楽しんでいます。

 

 もちろん無農薬なので皮も捨てずに、レモンビール(乾燥したレモンの皮のハチミツ漬)にしています。強い抗酸化力をもつエリオシトリンは、じつは皮の方に果肉の卜倍も多く含まれているのです。皆さんも、無農薬のレモンを見つけて、レモンビールやマーマレー ドなどにして食べてください。この他、食べ物ではありませんが、がん患者さんに勧めているのが、ビール酵母エビオス)です。エビオスは、昭和五年に発売された医薬部外品です。

 

 酵母というのは、アミノ酸組成からみると動物性タンパクと植物性タンパクの中間的な位置にあります。四量歩行の動物のタンパクほど害がなく、植物性タンパクよりはアミノ酸組成が動物性に近いのでバランスがいい。消化にすぐれ、かつ動物性タンパクのように腸内バランスを悪くしたり、がんを発生させる方向に働く心配がありません。

 

 食事療法をしている方は、動物性タンパクが厳しく制限されていますから、ビール酵母をとってアミノ酸を補給するとよいです。人体に必要な必須アミノ酸が全て含まれています。食事療法を行っている方には、一日に二〇錠の服用を勧めています。

がん再発を防ぐ完全食:済陽高穂著より