倍散として市販されている医薬品に対する注意
医薬品のなかには倍散(10~100倍)でのみ市販され,原木としては入手できないものがある.
医師の処方せんは,従来の慣習からリン酸コデイン,ロートエキスなどの例にみられるように,いずれも処方量は原末の量で記されていることがある.しかし倍散で市販されている医薬品では,倍散の量で処方されることがある.したがって調剤に際しては,それが原末で処方されているか,あるいは倍散で処方されているかを正しく判断する必要がある.
次に例示するように,医薬IWIの用量の輻の広いものではまったく判断に苦しむ場合がある.このような場合には医師に照会する必要がある.
[処方|] ネオレスタミン(マレイン酸クロルフェニラミン塩)
Neorestamin (maleate) o.oig
(またはネオレスタミン散 )..0g)
フェナセチン Phenacetin 1.0g
ロートエキス Scopol. Ext. 0.06g
以上1日量 分3包
(適応:感胃)
[処方2] ネオレスタミン Neorestamin 0.4g
フェナセチン Phenacetin l.Og
rJ-トエキス Scopol. Ext. 0.06g
以上1日量 分3包
(適応:感冒)
クロルフェニラミン塩の薬用量は1囗4~24 mgであるが,患者によって有効性にははなはだ相違があり,1日量3~40 mg の輻がある.処方1はネオレスタミン1囗量10 mg と判断できるが,処方2は単にネオレスタミンと記されているだけで,クロルフェニラミン塩の100倍散として0.4gか, 40 mgとすべきところを10倍散と間違えて記載したのか判然としない.
[処方3] フェノバルビタール Phenobarbital
クロナゼパム
パントシン
Clonazepam
Pantosin
Phenytoin
ハントシン(一般名パンテチンpantethine)の薬用量は,1囗30~600 mgである.パントシン散は5倍散であるので,単にパントシンと処方されたときは500 mg 必要なのか,5倍散として0-5 gすなわち100 mg 必要なのか,処方3は判断に苦しむ処方である.このような例が抗ヒスタミン薬,抗てんかん薬,自律神経遮断薬,ビタミンなどにしばしばみられる.