乳剤の調製法

 

 1)乳剤にしない例

 

 ヒマシ油には加杳ヒマシ油があり,次の処方で頓用される.

  [処方] 加香ヒマシ油 Aromatic Castor Oil

       精 製 水  Purified Water

                         各々 20.0 mL

         以上頓用

             (適応:下剤)

 精製水20mLの上に加香ヒマシ油20 mLを層積して交付する.

 

 2)界面活性剤を使用する例

[処方] 肝油

      Span 60

      Tween 80

      精 製 水

Cod Liver Oil

 Purified Water

(適応:栄養剤)

   300 mL

    30g

    20g

全量 1000 mL

 

 これは3倍用肝油乳剤(予製剤)である.肝油を微温に保ち,これにSpan60およびTween 80 を溶かした後,同温にした適量の水を加え激しく振とうして乳剤とする.

 

 日局の製剤総則には,「シロップ剤は,白糖の溶液又は白糖,そのほかの糖類若しくは甘味剤を含む医薬品を比較的濃稠な溶液又は懸濁液などとした液状の内用剤である.本剤には,医薬品の性質により,用時溶解又は懸濁して用いる製剤もある.本剤には,別に規定するもののほか,芳香剤,着色剤,保存剤,安定剤,懸濁化剤,乳化剤,粘稠剤などを加えることができる.」と規定されている.

 

 シロップ剤は本来白糖の濃厚な溶液であったが,小児用の投与剤形として懸濁シロップ液が繁用され,さらにドライシロップといわれる剤形が用いられるに至り,シロップ剤の範囲が拡大された.

 

(1)溶液型シロップ剤

 

 日局には単シロップ,セネガシロップ,トウヒシロップ,l・コンシロップおよびトリクロホスナトリウムシロップの5種類が収載されている.

 

 一般に薬用量が小さく,水溶性のものは溶液型のシロップとする.

 

 [市販製剤例]

  アリメジンシロップ

    (lmL中酒石酸アリメマジン0.5 mg含有)

  ビソルボンシロップ

    (lmL中塩酸ブロムヘキシン0.8 mg含有)

  ブリカニールシロップ

    けmL中硫酸テルブタリン0.5 mg含有)

  ペリアクチンシロップ

    ( 1 mL中塩酸シプロヘプタジン0.4mg含有)

  メジコンシロップ

    (1mL中臭化水素酸デキストロメトルファン2.5 mg含有)

  メプチンシロップ

    (1mL中塩酸プロカテロール5μg含有)

 

(2)懸濁シロップ剤

 

 懸濁シロップ剤は,難溶性医薬品を微粉末とし,適当な懸濁化剤を加えてシロップ剤に懸濁させた内用液剤である.薬物粒子の沈降を防ぎ,再分散性をよくするため,懸濁化剤や粘稠剤のはかに,界面活性剤や電解質などの添加剤が加えられている.小児を対象とする濃厚懸濁シロップ剤として市販されているものには,解熱剤,鎮咳剤,抗生物質などのシロップ剤がある.

 

 懸濁シロップ剤の利点は,①不溶性もしくは難溶性医薬品の液剤療法が可能である,②水溶液中で不安定な医薬品の液剤療法が可能である,③味の悪い医薬品の液剤療法が可能である,などである.欠点としては,常に振とうして剤形の均一一性に留意する必要があり,また配合時における剤形が不安定であることがあげられる.

 

 これらの懸濁シロップ剤を実際に投与する場合,注意しなければならないことは,従来の水剤のように投薬びんに入れて,その目盛りによって服用するために,水で薄めて与えることは好ましくない.すなわち,一般に市販の懸濁シロップ剤は,そのままの状態でもっとも安定に調製されているのであって,その比較的高い粘稠度が製剤の分離を防ぐ重要な因子となっている.したがって,水で薄めると分離が促進される.やむをえず薄める場合には,水を用いずに,単シロップあるいは希釈液(懸濁液剤用卜3などを用いるのがよい.なお,この場合は計量カップあるいは計量匙を添付し,1回の服用量がその計量カップまたは計量匙の整数倍になるように希釈液を加え謌製して与える必要がある.

 

  塩酸ドキシサイクリンシロップは1mL中塩酸ドキシサイクリン5 mgを含むものが市販されている.

 

 塩酸ドキシサイクリンシロップ40mLを量取し,単シロップ10 mLを加え全量50mLに調製する.

 

  [処方2] マレイン酸クロルフェニラミンシロップ

         Chlorpheniramine Maleate Syrup      5 mL

        フェノバルビタールエリキシル

         Phenobarbital Elixir              6 mL

 

 マレイン酸クロルフェニラミンシロップ10 mL,フェノバルビタールエリキシル12 mLをそれぞれ量取し,単シロップ8mLを加えて全量30mLに調製して,1回2匙ずつ服用と指示して与える.交付の際,用量2.5 mLを添付する.

 

 塩酸シプロヘプタジンは0.04%シロップ剤,ヒベンズ酸チペピジンは0.5%シロップ剤,トラネキサム酸は5%シロップ剤である.

 

 塩酸シプロヘプタジンシロップは0.4 mg/mLで15 mL, ヒペンズ酸チペピジンシロップは5 mg/mLで12 mL, トラネキサム酸シロップ・は50 mg/mLで18 mLをそれぞれ量取し,単シロップ35 mLを加えて全量80mLに調製し,1回20mLを服用する.

 

 [市販製剤例]

 

  アスペリンシロップ

    ( 1 mL中ヒベンズ酸チペピジン5.54 mg 含有)

 

  カナマイシンシロップ

    (lmL中硫酸カナマイシン50 mg力価含有)

  ファンギソンシロップ

    (lmL中アムホテリシンB100 mg力価含有)

  ポンタールシロップ

    (lmL中メフェナム酸32.5 mg含有)

 

(3) ドライシロップ剤

 

 ドライシロップ剤は,日局製剤総則シロップ剤の「用時溶解又は懸濁して用いる製剤」に相当する.

 

 本剤は用時水を加えて懸濁液剤とするように,主薬に白糖,分散剤などを加えて顆粒状に製したものである.ある種の抗生物質,化学療法剤などは液剤として経時すれば,その力価,効力が低減することがあり,また懸濁している薬品が沈降し,容易に復元しないことがある.このような場合に用いる剤形である.懸濁液として調剤する場合, 0.125~0.25% CMONaを分散剤として用いたほうが好ましい.

 

 なお,本剤を加えて懸濁液剤とするときは,すでに懸濁シロップ剤となっている製剤に比べて分散状態が悪いので,よく懸濁させてから交付するように注意しなければならない. (2)の懸濁シロップ剤の場合と同様に希釈液を用いるのがよい.なお,ドライシロップ剤は,顆粒状のまま分包し投与して服用と1回分を適量の水を加えて内服する場合もある.4日分までの処方では懸濁剤として交付し,5日分以上の処方では,用時溶解または懸濁し

て用いる製剤として散剤付水剤にするとよい.

 

 ドライシロップ剤は一般に吸湿性で,固形のまま保存しても力価の低下するおそれがあるため,分包して投与する場合には気密性に注意し,薬剤を低温,低湿度の場所に保存するよう患者に指示することが必要である.

 

  [処方|] ヒベンズ酸チペピジンシロップ

 Tipepidine Hibenzate Syrup

塩化リゾチームシロップ

 Lysozyme Chloride Syrup

塩酸ツロブテロールドライシロップ

 Tulobuterol Hydrochloride Dry Syrup

 

ドライシロップ剤を溶かした後,他のシロップ剤を加えてセフロキサジンドライシロップ

 

 Cefroχadine Dry Syrup

 

塩化リゾチームシロップ

 Lysozyme Chloride Syrup

  以上1日量,1日3回

  与7日分

 

[市販製剤例]

 エチルコハク酸エリスロマイシンドライシロップ

  (lg中エリスロマイシン100 mg または200 mg 力価含有)

 ケフレックスドライシロップ

  (1只中セフアレキシン100 mg, 200 mg, 250 mg または500 mg 力価含有)

 ビクシリンドライシロップ

  (1g中アンピシリン100 mg 力価含有)

 ビブラマイシンドライシロップ

  け只中塩酸ドキシサイクリン20 mg力価含有)