エリキシル剤

 日局の髓剤総則にはエリキシル剤は,通例,甘味及び芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の内用剤である.本剤を製するには,通例,医薬品又はその浸出液にエタノール,精製水,芳香剤及び白糖,そのほかの糖類又は甘味剤を加えて溶かし,ろ過又はそのはかの方法によって澄明な液とする.本剤には,必要に応じて溶解補助剤,着色剤,保存剤などを加えることができる.本剤に用いる容器は,気密容器とするコと規定されている.

 

 エリキシル剤中の溶質は通常水溶性とエタノール可溶性成分の両者よりなっている.澄明な溶液として存在させるために必要なエタノールの割合は溶質の溶解性によって異なるが,一般には必要最小量のエタノールが用いられている.エタノールの含量は4~40%で,主薬を溶解させるために多量に加えたものもあれば,単に芳香をつけるために芳香精を加えた程度のものもあり,さらに溶解性を高めるため,これにグリセリンプロピレングリコールソルビトール,シロップを加えたものもある.エリキシルをアルコール濃度が低い溶液や水溶液で希釈すると,主薬が析出することがあり,注意を必要とする.

 

 エリキシル剤は,芳香剤および甘味剤のみを含み,これに医薬品を溶かして用いる賦形剤ともいうべき芳香エリキシル(単エリキシル)と,治療用医薬品を含みその薬効を期待する治療用エリキシルに分類される.しかし,治燎用エリキシルも賦形剤的に用いられることがある.例えば,フェノバルビタールエリキシルに臭化物を配合して鎮静作用を増強させたり,抗コリン薬を配合して胃液の分泌抑制と胃の運動を抑制させる場合などがある.

 

 エリキシル剤はシロップ剤に比較すると甘味も少なく粘性も低い.単エリキシルを矯味剤としての立場からみると,シロップ剤のほうが矯正能力は大きいが,エタノール可溶性薬物の溶解液としての利用価値は大きい.特にある薬物を内用液剤として調製する必要を生じた場合,溶解力および味覚にすぐれた賦形剤として,また既存のエリキシル剤の希釈用として適している.

 

 元来,エリキシル剤は他薬を配合せず,単味そのままで服用するようにつくられた製剤である.近年は懸濁シロップ剤中に処方されることが多いが,その剤形をそこなわないように注意する必要がある.

 

 もっともよく用いられる治療用エリキシルで,市販品のフェノバルビタールの含量は0.4%である.水性エタノール以外に溶解性を高めるためグリセリンプロピレングリコールを用い,さらに単シロップが添加されている.

 

「浸剤及び煎剤は,いずれも生薬を,通例,精製水で浸出して製した液状の製剤である.」と定義されている.

 

 また,「本剤を製ずるには,通例,生薬を次の大きさとし,その50 gを量り,浸煎剤器に入れる.