老化を促し、あらゆる成人病の元になる活性酸素

 

 近頃、「抗酸化物質」が注目を集めています。「抗酸化作用が強いから健康にいい」という言い方を耳にしたことはおありですか。ビタミンA、B、Cや赤ワイン、お茶、果物などに強い抗酸化作用が認められています。

 

 活性酸素は、非常に不安定な酸素で、つねに何かと結合して酸化しようとしています。酸化によって活性酸素は、細胞を傷つけます。その一方で、マクロファージなどの免疫系の細胞は、この活性酸素の力を利用してがん細胞を始め、異常な細菌を殺しています。「両刃の刃」というべきでしょうか。

 

 しかし活性酸素の殺傷能力は非常に強いため、放射線を細胞に照射すると活性酸素が体内に発生する特性を生かしたのが、がん治療の二本柱のうちのひとつ、がんの放射線治療なのです。最近では情報伝達機能に働くことも解明されてきており、その意味では、活性酸素は体に必要な物質といえるでしょう。

 

 生体にとり必要な物質でありますが、「両刃の刃」と述べたとおり、活性酸素が過剰になると細胞膜を次々に傷つけ、皮膚や内臓、骨などあらゆる細胞にダメージを与えます。つまり、自分の体をも攻撃してしまう。非常にやっかいな側面を持っています。

がん再発を防ぐ完全食:済陽高穂著より

 

 

 抗酸化食品で、活性酸素の溜め込みを防ぐ

 

 活性酸素は酸素を利用してエネルギーを作っている生物の体内では、必ず発生するものです。呼吸によって取り込まれた酸素は、エネルギーの産生回路で消費され、最終的には

水になって捨てられます。この過程で数パーセント発生するのが活性酸素です。 人間の体内には、活性酸素の毒性を消し去るために働いている酵素もいます。「抗酸化物質(スカベンジャー)」と呼ばれる掃除屋で、活性酸素の害から私たちの体をまもるため、活性酸素と結びついて無毒化をはかります。」秒の千分の一ぐらいの猛スピードで活性酸素を処理するといいますから、なかなかのすご腕ですね。

 

 年をとると、この頼もしい掃除屋酵素の働きも低下してきます。そうして体内の掃除屋だけでは処理しきれないほど活性酸素が過剰になると、細胞の遺伝子が傷つけられてがんが発生したり、糖尿病や動脈硬化などの慢性病のほか、皮膚のシミ・シワ、白内障などの老化現象が促進されるのです。

 

 活性酸素は、ストレスや大気汚染、食品添加物、紫外線、激しい運動、飲酒や喫煙などによって増えることが分かっています。現代人の生活には、活性酸素を増やす要素がたくさんあります。

 

 そこで、体内の掃除屋に頼るだけでなく、活性酸素を消去し、酸化を抑える「抗酸化食品」を体の外から摂取する必要が出てきます。

 

 活性酸素が過剰になりやすい体は、がんになりやすい体といえます。ですから、体に活性酸素をためない生活をし、かつ抗酸化物質を食物からたくさんとって、余分な活性酸素を直ちに処理することが大切です。済陽式食事療法では、野菜や果物の人量摂取を勧めていますが、これは抗酸化作用が強く、日常的にとることが容易な食材だからです。

がん再発を防ぐ完全食:済陽高穂著より