2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

新薬価制度は実現するのか?

薬価制度改革案に関する中医協での議論は、あくまでも叩き台であり制度論です。厚生労働省や政治のコミットメントをどこまで得られるかが重要です。医薬品業界としては官民対話の場を最大限活用したいところでしょう。日薬連の提案が全面的に受け入れられる…

アリセプトの新しい剤形

エーザイは2007年に米国のバイオベンチャー、モルフォテックとMGIファーマを買収し、オンコロジー(腫瘍学)領域を大幅に強化しました。両者の買収はエーザイが1980年代から米国で取り組んできた抗がん剤の研究開発が、いよいよ実戦段階に入ったことを意味しま…

三菱田辺製薬:三菱グループの医薬事業の中核へ

2007年に田辺製薬と三菱ケミカルホールディングス傘下にあった三菱ウェルファーマが合併し、田辺三菱製薬(英語名はmitsubishi tanabe pharma)が誕生しました。三菱ケミカルホールディングスは田辺三菱製薬の株式56.3%を取得しており、大日本住友製薬と同様に…

我が道を行く小野薬品工業

小野薬品工業は、研究開発に「化合物オリエント」という独自の考えをもっています。化合物オリエントとは、糖尿病とか高血圧というように疾病を定めて新薬を開発するのではなく、新薬候補となる新規化合物を探してそれがどのような疾病に効くのかを突き止め…

新薬承認プロセスの問題点

日本の新薬承認プロセスは、万国共通の有効性と安全性を2つの柱としています。新薬承認審査で中心的役割を担っているのは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会です。新薬承認プロセスは、医薬品医療機器…

硬直性脊椎炎とライター氏症候群に対する主要組織適合性複合体(MHC)の影響

ヒトの主要組織適合性複合体(MHC)は、非自己としての外的抗原と一緒に認識される自己抗原で、個人認識のIDカードとして働きます。免疫反応に際して細胞間の共同作用は、このIDカードによる個人認識を基礎にして行われています。硬直性脊椎炎とライター氏症候…

消化性潰瘍治療剤アシフェックス

主力製品の特許切れが相次ぐ2010年問題への対応は各社共通の課題ですが、とりわけエーザイにとってアリセプトのプロダクト・ライフサイクルマネジメントは死活問題です。またアリセプトのあとの2013年5月に消化性潰瘍治療剤アシフェックス(日本名パリエット)…

アメリカの医薬品市場が拡大

オバマ大統領と民主党の経済対策と金融危機対応が奏功し、米国経済の回復が予想以上に早かったため、マイルドな形での医療制度改革は継続されますが、極端な医療費抑制やアンチ医薬品業界的な政策導入は見送られます。一方で企業向けの法人減税、研究開発減…

統合失調症治療剤ルラシドン

2005年に大日本製薬と住友製薬が合併し、大日本住友製薬が誕生しました。親会社の住友化学が50.1%の株式を保有します。中堅メーカー同士の合併による売り上げ拡大、新薬候補品の数量確保など、規模を追求した合併です。大日本製薬は循環器、中枢神経系、消…

米国の医療サービスが景気に左右されやすい理由

米国の公的医療保険制度は、大きくメディケアとメディケイドに分けられます。メディケアは、連邦政府が管轄する高齢者を対象とした公的保険で、約4000万人が加入しています。加入資格は、社会保険や年金などの受給資格のある65歳以上の高齢者となっています…

生き残るためにはアンメットメディカル・ニーズの充足が不可欠

医薬品産業が規制産業であることに異論はないでしょう。2007年に厚生労働省が発表した新医薬品産業ビジョンは、国は強力を惜しまないが、最後は産業界の努力次第と突き放したものです。しかも、国の協力は不可欠であり、新医薬品産業ビジョンで掲げられた国…

IMSとクレコンは製品及び疾病領域や薬効別の分析に役立つ

医療用医薬品の市場規模を示すデータソースには、IMSやクレコン、厚生労働省の薬事工業生産動態統計、などが存在します。IMSとクレコンは製品及び疾病領域や薬効別の分析に有効です。IMSは、医薬品の世界市場については唯一のソースと言ってよいでしょう。一…

医薬品企業が保有すべき現預金の水準

日本の医薬品セクターに共通する資本効率の低さ=ROE(自己資本純利益率)水準の低さですが、要するに現預金を積み上げている経営姿勢に対する批判でした。ここで、合えて表現に過去形を用いたのは、2007年11月以降エーザイ、武田薬品工業、第一三共が海外企業…

協和発酵キリン

協和発酵工業が2007年にキリンホールディングスの傘下入りで合意し、2008年4月にキリンファーマの子会社化し、同10月に正式にキリンファーマと合併して、協和発酵キリンが発足しました。協和発酵キリンのスローガンは、抗体医薬を中核としたワン・アンド・オ…

糖尿病治療剤アクトスと消化性潰瘍治療剤プレバシッドの売上げが減速

武田薬品は自他ともに認める業界最大手です。タケダイズム=誠実を求心力にしてグローバル展開を加速させています。2008年5月に88億ドルでミレニアム・ファーマスーティカルズの買収を完了し、合弁会社であったTAPと米国子会社TPNAの合併も完了しました。こ…

沢井製薬

沢井製薬はジェネリック最大手です。ただそれは日本国内だけのことで、海外のジェネリックメーカーとの経営規模の格差は、メジャーリーグと高校野球の差以上にあるでしょう。それだけ国内では、ジェネリックは長らく日陰の存在であったと言えます。そのジェ…

大正製薬

大正製薬はOTC(大衆薬)分野での売上げは国内第1位です。医家向けの医療用医薬品の対岸にあるのがOTCです。大正製薬はOTCについて「セルフメディケーション」という表現を用いていますが、これは予防や自己管理という意味を含むのでしょう。軽い風邪ならばOTC…

塩野義製薬

塩野義製薬は2008年9月に米サイエル社を約14億度のTOB(株式公開買付け)で買収しました。サイエルの買収は米国における販売機能獲得を狙ったものです。将来的にサイエルの販路に加わる塩野義製薬の新製品は、フェーズⅡ段階にあるアトピー性皮膚炎治療剤「S-77…

アステラス製薬

アステラス製薬は、2005年に当時の売上高で業績3位の山之内製薬と同5位の藤沢薬品工業が合併して誕生しました。医薬品業界初の国内大手同士の合併として注目された一方、合併後に国内販売の低迷や製造原価の上昇に加え、新薬開発パイプラインが劣化したため…

ヘルベッサーのバルク輸出と売り上げロイヤルティー

医薬品企業の収益の源泉は新薬であり、新薬開発が難しくなる中で医薬品企業のビジネスモデルはますますハイリスク・アイリターンになっていきます。日本の医薬品企業の収益構造がどのように変化してきたかの見てみましょう。過去10年間、ビジネスモデルが大…

日本の治験は評判が悪い

外資系メーカーの対日進出についてですが、すでに世界のトップ10クラスのメーカーは、日本市場で国内の準大手クラス以上の陣容を販売と開発面で備えています。したがって、大手外資系メーカーが国内医薬品企業を買収するメリットはほとんどありません。外資…

武田薬品

今日、日本企業が海外で企業買収を仕掛けるケースは珍しくありません。しかし一方で買われる可能性も否定できません。特に医薬品企業の中で高水準の現預金を保有する資本効率が悪く、株価が過小評価されていれば、格好の買収ターゲットとなります。この場合…

グローバルファーマ

グローバルで展開する日本の医薬品企業の理想像は、売上高2兆円、営業利益6000億円以上(営業利益率30%以上)、研究開発費5000億円(売上高研究開発費率25%)、地域別売上構成比は日本35%、欧州20%、新興国15%、ROE(自己資本純利益率)は、20%以上といったもので…

中外製薬

中外製薬はロシュ傘下に入り、新薬開発パイプラインの充実度は他社の追随を許さぬレベルに達しました。2007年にロシュから導入した分子標的薬剤と呼ばれる抗癌剤アバスチンとタルセバ(肺癌)を国内で発売し、2008年~2009年にかけて米国で中外製薬が開発したヒ…

分子生物学

高等動植物のみならず、細菌にも感染するウイルスがあります。このウイルスを(バクテリオ)ファージといいます。ファージ感染の解析とファージ核酸の研究が分子生物学の発展に大きな貢献をしたことはよく知られています。一般にある供与菌でファージを増殖さ…

儲けた製薬企業

1999年3月末から実施された大衆薬分野での「規制緩和」によって、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)などの新規チャンネルでの売上を伸ばした製薬企業は万々歳だった。が一方、コンビニに客を獲られた薬局・薬店は不平たらたらである。 それまでドリン…

新薬開発の成功率が低下した理由

欧米には売上高4兆円を超えるファイザーやグラクソ・スミスクラインなどのメガファーマが存在します。これらのメガファーマは、従来からのビジネスモデルを維持することが難しくなっています。 現在は新たなビジネスモデルを模索し、次の段階を目指すための…

プロテウス・ミラビリスとセラチアは全菌株がテトラサイクリン耐性

テトラサイクリン体制を支配するプラスミドはかなりの頻度で存在し、発現する耐性は非常に高いです。主なる耐性機構は、膜タンパクの新生や変化によって菌体内からテトラサイクリンが排出され、そのため菌体内の濃度が抗菌作用を示しうる濃度にまで達しない…

大腸菌と志賀赤痢菌は共通の毒素をもつ

北米において1978年から5年間に下痢患者から分離した2000株以上の大腸菌から58株の細胞毒性を示す株が検出されました。その70%がO125K60H11で、O157H7はこれに次いで2番目に多い細胞毒性を示す血清型でした。1982年11月に、米国のオレゴン州、ミシガン州に…

生活習慣病薬の開発競争

生活習慣病はかつて成人病といわれていた疾患だ。「成人になってから発症する」と誤解されるため、厚生省がこの名称に変えた。つまり小中学生での肥満、糖尿病が増加の一途を辿っているからである。 生活習慣病とは、高血圧症、高脂血症(高コレステロール)…