武田薬品

今日、日本企業が海外で企業買収を仕掛けるケースは珍しくありません。しかし一方で買われる可能性も否定できません。
特に医薬品企業の中で高水準の現預金を保有する資本効率が悪く、株価が過小評価されていれば、格好の買収ターゲットとなります。この場合、買収を仕掛ける側は海外の製薬企業ではなく、特定の投資ファンドや投資家である可能性もあります。
買収資金は被買収企業のもつ現預金と営業キャッシュフローから充当することが可能という発想です。
従って、多額の現預金を持つという事は買収ターゲットになりやすいと言うことです。多くの投資家が昨今の日本企業による買収防衛策導入に懐疑的なのは、こうした現預金を有する旧態依然とした企業が、企業価値向上の努力を怠り株主還元も十分に行われないことを懸念しているためです。
日本の医薬品業界で一番お金持ちの会社は武田薬品工業です。ミレニアム買収で減少したとはいえ、7000億円近い手元流動性に加えて無借金経営です。しかも年間3000億円近い営業キャッシュフローを生み出しています。
手元流動性の高さでは、小野薬品工業参天製薬も目立つ存在です。小野薬品工業は約1200億円、参天製薬は約460億円の手元流動性があります。第一三共も約3100億円の手元流動性を有していますが、以後のランバクシー・ラボラトリーズ買収で約4900億円を支出しました。
いわゆる戦略的投資の具体的な案件もなく、積極的に株主還元や有効なキャッシュマネジメントができない企業に対する株主の視線は厳しくなっています。自社株買いは最近になってようやく、株主還元策の一環として定着してきました。
しかし、漠然とした自社株買いはよくありません。例えば、大正製薬は自社株の保有比率が7.1%に高まっているにもかかわらず、株式の消去には消極的に見えます。株式交換による企業買収のために保有するだけでは説明不足です。
やはり一つ一つの企業行動には明確な目的があるはずであり、それをステークホルダー(株主をはじめとする企業を取り巻く利害関係者)へ知らしめることは大切です。
日本の医薬品企業にとって、中期計画などで向こう3~5年間の期間損益や経営方針を示す事は至極当然な行動となっていますが、手元流動性の活用の仕方についても考えを示していくべきでしょう。もちろん考えるだけではなく、実際に行動へ移すことが重要であることは言うまでもありません。