日本の治験は評判が悪い


外資系メーカーの対日進出についてですが、すでに世界のトップ10クラスのメーカーは、日本市場で国内の準大手クラス以上の陣容を販売と開発面で備えています。したがって、大手外資系メーカーが国内医薬品企業を買収するメリットはほとんどありません。
外資系メーカーによる企業買収があるとすれば、医薬向け点眼剤やジェネリックOTC(大衆薬)等の特定領域における補完的な買収でしょう。外資系メーカーにとって日本市場は、いくつかの点で魅力的です。2年に1度薬価改定があるとはいえ、急な制度変更がなく医薬品市場そのものは安定的です。しかも、外資系メーカーが発売する新薬は、欧米市場を視野に入れたグローバル製品であり、こうした海外データを活用できるため、日本で売りやすい製品が多いのです。
欧米で先行発売されていると研究開発費や減価償却費はすでに回収済みであり、日本で得ることができる残存的な利益は大きいです。日本の臨床試験(治験)で特にフェーズⅢは高い、遅い、と悪評ですが、外資系メーカーは海外治験を優先させ、そのデータを日本でも利用することが考えています。最近は、日本の医薬品企業も海外開発を優先させるケースが増えていますが、その事情は外資系メーカーと同じです。いや、外資系メーカーよりも国内の治験環境の不備に関する悩みは大きいはずです。