儲けた製薬企業


 1999年3月末から実施された大衆薬分野での「規制緩和」によって、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)などの新規チャンネルでの売上を伸ばした製薬企業は万々歳だった。が一方、コンビニに客を獲られた薬局・薬店は不平たらたらである。

 それまでドリンク剤には薬効成分が入っているため「医薬部外品」の扱いを受けていた。そのため薬局・薬店でしか販売されていなかった。それが解禁になったため、コンビニや駅の売店でも販売可能になったのである。

 ドリンク剤最大手の大正製薬では、99年9月中間期は規制緩和の対象(医薬部外品へ移行)となった「リポビタンD」を含むリポビタンシリーズの売上高は530億円(前年同期比15・7%増)とドリンク全体の伸び率H・4%を大幅に上回った。コンビニなど新規チャンネルの比率は27%になったという。その反動で既存の販売ルートだった薬局・薬店の実績は同9・7%の減となった。

 武田薬品工業医薬部外品ドリンク剤は99年9月期で前年同期で40億円増と2倍の急伸を示した。倍増した分はそっくり新規レートだという。エスエス製薬の医薬部外品ドリンク剤の売上は同年56億円だったが、このうち32億円か新規ルートだ。ただし薬局・薬店向けも10%伸びた。

 三共はドリンク剤全体の26億円のうち、医薬部外品が24億円を占める。やはり「コンビニ様々」だ。

 しかし、メーカーが笑っても、既存の販売ルートだった薬局・薬店(薬系ルート)は怒り心頭だ。かつての販売チャンネルは、いまや落ちに落ち込みコンビニに売上の半分を持っていかれている。製薬企業には他の大衆薬もあり、旧チャンネルの薬局・薬店とは仲良くしたい。このためドリンク剤の自動販売機を無料設置するなどご機嫌とりにやっきだ。

 しかし、「ドリンク剤が売れているのは、薬局が開いていない深夜と早朝」とメーカーの幹部がいうように、薬局の企業努力も必要ではある。コンビニに置かれたことで「ブランド勝負」の時代になったわけだが、薬剤師のいない大衆薬(医薬部外品)とは何だったのか、改めて考えさせられる。