糖尿病治療剤アクトスと消化性潰瘍治療剤プレバシッドの売上げが減速


武田薬品は自他ともに認める業界最大手です。タケダイズム=誠実を求心力にしてグローバル展開を加速させています。
2008年5月に88億ドルでミレニアム・ファーマスーティカルズの買収を完了し、合弁会社であったTAPと米国子会社TPNAの合併も完了しました。これにより米国での事業基盤は増強されましたが、これまで米国事業をけん引してきた糖尿病治療剤アクトスと消化性潰瘍治療剤プレバシッドの売上げが減速しています。
プレバシッドは2009年11月、アクトスは2011年1月に米国で物質特許が満了するため、その後継品として糖尿病治療剤としてDPP-Ⅳ阻害剤、消化性潰瘍治療剤は改良型の「KAPIDEX」を開発しました。「SYR-322」はFDAの承認審査期限が当初予定の2008年10月から2009年6月へ先送りされたため、承認および発売時期もまだ目途が立っていません、一方、「KAPIDEX」は2009年1月30日にFDAより販売承認を正式に取得しました。両製品の出来如何で武田薬品工業の米国事業展開は修正を迫られることになります。
日本企業の中では米国で抜きんでる存在ですが、欧州と新興国市場への取り組みは今後の課題です。特に新興国市場には、武田薬品工業の強みである糖尿病と高血圧を中心とする生活習慣病のフランチャイルズを上手に転用させることを考えるべきでしょう。
新薬開発パイプラインは導入活動が奏功し、2000年代前半当時の最悪期からは完全に脱しましたが、本来の姿からすれば自社開発品が不足している状況は変わりません。ミレニアムの買収によって眼領域の新薬候補群は増加しましたが、買収金額に見合う成果が出るかどうかはまだ判断しかねます。いずれにしても過去5年間に承認された自社開発品は不眠症治療剤ロゼルムだけという厳しい現実からもわかるように、自社の研究開発の生産性向上は待ったなしの状況にあります。
2007年度の業績は売上高1兆3748億円、営業利益4231億円、経常利益5364億円、当期利益3555億円、と高水準の収益を維持しています。特に営業利益は2番手のアステラス製薬の2759億円を1.5倍上回っており、利益規模に加えて大手4社の中では最高の利益率を誇っています。
2008年度はミレニアム買収に伴う一過性費用の計上や買収のれん代の発生で営業利益は3000億円を割り込みますが、2009年度は4000億円が再び視野に入って来るでしょう。
2010年度以降に武田薬品工業が真のグローバルプレーヤーとして勝ち上がっていくためには、「SYR-322」の早期大型化とアクトスのプロダクト・ライフサイクルマネジメント(PLCM)による糖尿病領域でのプレセンス拡大が必須条件です。
眼領域については、ミレニアムの買収によって世界のトップ企業への挑戦権を得たところです。まだまだ盤石の体制とは言い難いですが、日本の医薬品企業の中でグローバルトップ10プレーヤーから最短距離にいるのは武田薬品工業です。
そのポジションを上げていくためのエンジンが糖尿病とガンん領域ということになりますが、やや馬力不足という感は否めません。やはり時間がかかっても自社開発品の充実度工場が鍵でしょう。ミレニアム買収で現預金を減らしたとはいえ、7000億円近い手元流動性の有効活用も重要です。