医薬品企業が保有すべき現預金の水準


日本の医薬品セクターに共通する資本効率の低さ=ROE(自己資本純利益率)水準の低さですが、要するに現預金を積み上げている経営姿勢に対する批判でした。
ここで、合えて表現に過去形を用いたのは、2007年11月以降エーザイ武田薬品工業第一三共が海外企業の大型買収に踏み切ったためです。エーザイのMGIファーマ、武田のミレニアム・ファーマスーティカルズ、そして第一三共のランバクシー・ラボラトリーズという大型買収は、いずれも現預金による株式取得でした。今まで積み上げてきた現預金を、戦略的な企業買収に投入したのです。その結果として、現預金の減少や借入金の増加が生じたことが事実です。
医薬品企業が保有すべき現預金の水準については見方が分かれますが、年間売上高が1兆円の企業であれば、不要不急で純粋な銀行預金1000億円、新製品や技術導入に充当するために1000億円、そして副作用問題や訴訟リスクに備えるために1000億円、合計3000億円が1つの指標になるのではないでしょうか。
いずれにしても医薬品業界にとってROEの上昇とともに、欧米水準に追いつくためにも、資本効率の改善とバランスシート(貸借対照表)のマネジメントは重要な経営課題です。