新薬承認プロセスの問題点

日本の新薬承認プロセスは、万国共通の有効性と安全性を2つの柱としています。新薬承認審査で中心的役割を担っているのは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会です。
新薬承認プロセスは、医薬品医療機器総合機構の審査官と薬事・食品衛生審議会の専門委員による審査を経て、必要に応じて薬事・食品衛生審議会の部会や薬事分科会の審議を経た後、厚生労働大臣の承認を得ることが可能になります。通常は、正式な承認日から60~90日以内に薬価基準収載されます。
新薬承認プロセスで解消されるべき問題点は、承認までの審査時間の長さとドラッグラグです。審査の長期化は、医薬品医療機器総合機構の審査官の人員不足による部分が大きく、治験開始前の治験相談制度や治験届出制度が十分かつ迅速に活用できていません。
医薬品医療機器総合機構では2007年度から3年間で236名の審査官を増員し審査体制の充実を図っています。医薬品医療機器総合機構は、審査官増員を主目的にして新薬を申請する企業からの審査手数料を大幅に増額しており、それに見合う承認審査のスピードアップの早期実現が待たれます。
ドラッグラグは、日本での治験環境の悪さ(コストが高い、進行が遅い、患者が少ない、など)や新薬承認までの時間の長さによって、必要とされる新薬が患者の元に届かないことです。抗ガン剤のアバスチンやタルセバ、ネクサバールなどは緊急措置的な未承認薬使用問題検討会議によってフェーズⅢが免除され、優先審査の対象となり早期承認が実現しました。根本的な問題が解決されたわけではなく、国際治験体制の整備などは国と行政、企業が協力して取り組まなければならない課題です。