生き残るためにはアンメットメディカル・ニーズの充足が不可欠

医薬品産業が規制産業であることに異論はないでしょう。2007年に厚生労働省が発表した新医薬品産業ビジョンは、国は強力を惜しまないが、最後は産業界の努力次第と突き放したものです。しかも、国の協力は不可欠であり、新医薬品産業ビジョンで掲げられた国の施策はいずれも重要であることに異論はないですが、具体化するためには相当の時間が必要で紆余曲折もあるでしょう。グローバル競争の中で医薬品業界に与えられた時間は長くありません。
医療財政や医療制度改革の影響を受けることは避けられないとしても、既成の枠の中で一層の体質強化を図ることが最大の経営課題であることに変わりはありません。
欧米の医薬品企業と比べて体力差がある日本の医薬品企業は、どのような企業像を目指すべきでしょうか。簡単に言えばアンメット・メディカルニーズに強い医薬品企業です。医薬品企業のミッションは患者の疾病克服のために優れた新薬を開発することです。
この現代でも十分に治療ニーズが満たされていない疾病領域が数多く存在します。癌やアルツハイマー認知症などは根本治療薬がないため、患者や患者を介護する家族の負担も大きくなります。糖尿病は一度発症すると完治が難しく、進行すると腎症や網膜症などの合併症を引き起こすため、患者のQOLが急速に悪化します。
このように私たちの身近にある病気でも、現代の医療や医薬品によって満たされないアンメット・メディカルニーズは存在します。とりわけ慢性疾患に対しては、薬物療法の果たす役割は高まる方向にあります。医薬品企業は、第一に注力する疾病領域を選定し、第二に投入する経営資源を有効活用していくことが重要です。