アステラス製薬


アステラス製薬は、2005年に当時の売上高で業績3位の山之内製薬と同5位の藤沢薬品工業が合併して誕生しました。医薬品業界初の国内大手同士の合併として注目された一方、合併後に国内販売の低迷や製造原価の上昇に加え、新薬開発パイプラインが劣化したためマネジメントの手腕が問われることになりました。現在は武田薬品工業に続く2番手です。
山之内製薬の強みであった泌尿器、循環器と消化器、藤沢薬品工業感染症と免疫、などの領域で存在感を高め、一方でOTCや非医薬品関連事業を売却し、経営資源を100%医療用医薬品事業へ投入する体制へ移行しました。
新旧の主力製品の2007年度売上高は高脂血症治療剤リピトール977億円、免疫抑制剤プログラフ1982億円、排尿障害改善剤ハルナール(米製品名フロマックス)757億円、頻尿・尿失禁治療剤ベシケア601億円、降圧剤ミカルディス626億円、消化性潰瘍治療剤ガスター609億円ですが、成長余地が大きいのはべしケアです。
プログラフは2008年4月に臓器移植の最大市場である米国で特許切れを迎えましたが、ジェネリックが現時点では承認されていないため売り上げを順調に伸ばしています。臓器移植に必要な免疫抑制剤は患者の生死に関与するだけに、ジェネリックへの切り替えは限定的と言われますが、無視できるものもないでしょう。
ハルナール(米製品名フロマックス)は国内で2005年にジェネリックが発売され、欧州で2006年に特許切れが始まっており、米国で2010年3月にジェネリックが発売される予定です。
リピトールは、競合品クレストールの台頭、ミカルディスも同系の降圧剤で6番目が市場参入し、競合が一段と激化しそうです。
ガスターは、国内で2002年にジェネリックが発売されてから売り上げは減少し続けていますが、売上高609億円は大健闘と言ってよいでしょう。
新製品は国内向けに合成抗菌剤ジェニナック、消炎鎮痛剤セレコックス、下痢型過敏症腸症候群治療剤イリボーが発売となり、国内売上高ではトップの武田薬品工業との差を詰めることが可能です。
アステラス製薬の最重要課題は、新薬開発パイプラインの強化です。合併後に藤沢薬品工業の新薬候補品が相次いで開発中止となり、重点領域の一つである免疫抑制剤の新薬候補が少ないです。一時は糖尿病関連の新薬開発も手掛けていましたが中途半端に終わりました。
そして大型新薬として期待された抗血液凝固剤、抗Xa因子「YM150」も、2008年度第1四半期決算時にフェーズⅢ入りが遅れることが発表されました。アステラス製薬の研究開発マネジメントに対する不安は日増しに高まっています。外部からの新薬導入も滞り気味なのも気がかりです。
新薬開発パイプラインを補充するために大胆な買収を仕掛けるか、自社開発品をじっくり育成するにしても、残り時間は多くありません。仮にプログラフは免疫抑制剤という特殊領域のためジェネリックの影響は限定的としても、米国でハルナールの特許が切れれば、年間400億円近い利益が消失することは確実です。こうした状況に対してアステラス製薬のマネジメントが無策であるとは思えないのです。