統合失調症治療剤ルラシドン


2005年に大日本製薬と住友製薬が合併し、大日本住友製薬が誕生しました。親会社の住友化学が50.1%の株式を保有します。中堅メーカー同士の合併による売り上げ拡大、新薬候補品の数量確保など、規模を追求した合併です。
日本製薬は循環器、中枢神経系、消化器領域に強みを持ち、住友製薬は感染症領域に強いことから、領域的にも補完関係が高いのです。しかし、住友化学傘下で株式上場を維持する親子上場については、資本と事業戦略の両面から制約がかかる可能性もあり望ましい形とは思えません。
大日本住友製薬も他の準大手同様の欧米での単独展開を視野に入れていますが、現在の新薬候補品だけでは難しいでしょう。統合失調症治療剤ルラシドンの米国での開発を橋頭堡にする戦略は100%の保証がないだけに不安が先行します。ビジネスモデルの最適化は、国内事業の基盤強化であり、海外はライセンスアウトを中心に考えるべきではないでしょうか。
業績面で正念場を迎えています。主力製品で2007年度売上高636億円を上げた降圧剤アムロジンに対して、2008年7月から30社以上がジェネリックに参入しました。
アムロジンは口腔内崩壊錠(OD錠)への切り替えなどの対抗措置が奏功し、現時点では大きな打撃は受けていないようですが、同薬はジェネリック普及促進の象徴的な存在となっており、3~5年後には売り上げが半減する可能性があります。
アムロジンの減収を補充するためにARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤)と呼ばれる降圧剤アバプロを導入しましたが、利益率ではアムロジンよりも劣ると推測されます。さらにルラシドンの開発費用が米国のフェーズⅢでピークに達するため、適正な利益の確保が難しくなるというリスクがあります。もう一段の選択と集中が必要です。