硬直性脊椎炎とライター氏症候群に対する主要組織適合性複合体(MHC)の影響

ヒトの主要組織適合性複合体(MHC)は、非自己としての外的抗原と一緒に認識される自己抗原で、個人認識のIDカードとして働きます。免疫反応に際して細胞間の共同作用は、このIDカードによる個人認識を基礎にして行われています。
硬直性脊椎炎とライター氏症候群の患者の大部分は、特定のIDカード、すなわちB27型のクラスIMHC分子をもっています。だから、遺伝的要素を無視することができませんが、一卵性双生児において、両方ともがこれらの病気になるか、ならないかについて合致しないことも多いため、遺伝だけで説明がつくことではありません。疫学的には肺炎桿菌、エルシニア、赤痢菌などの感染が関係していることが知られています。この患者に多いB27型のクラスIMHC分子上の高頻度で変異を起こす領域には、肺炎桿菌のニトロゲナーゼ蛋白にある6個の連続したアミノ酸と全く同じ配列があることがわかりました。この6個の連続したアミノ酸からなる相同部分を含む合成ペプチドは、対照群とは全く反応しないのに、両疾患患者の血清とは抗原抗体反応をすることが多いです。逆に肺炎桿菌のニトドゲナーゼ由来の同じ6アミノ酸を含む13アミノ酸ペプチドと両疾患患者の血清は反応陽性でした。両疾患患者の血清はエルシニアとも反応しました。
これらの結果は、両疾患が自己抗原であるB27型のクラスIMHC分子に対する自己免疫疾患であることを示唆しています。多分、B27型のクラスIMHC分子と相動性のある蛋白をもつ微生物が病気を誘発するのでしょう。