大正製薬

大正製薬OTC(大衆薬)分野での売上げは国内第1位です。医家向けの医療用医薬品の対岸にあるのがOTCです。
大正製薬OTCについて「セルフメディケーション」という表現を用いていますが、これは予防や自己管理という意味を含むのでしょう。軽い風邪ならばOTCで十分に対処できるわけですが、医家向け医療用医薬品の成分を転用した「スイッチOTC」が数多く普及すれば、OTCで対応可能な部分は大きくなります。将来的には予防や健康管理などの分野を視野に入れ、そのための受け皿としてOTCを活用していくことは可能です。
日本のOTC市場規模が2500億円強と推測されます。ちなみに大正製薬の2007年度のセルフメディケーション事業売上高は1527億円。そのうちドリンク剤のリポビタンシリーズの売上高は766億円です。
2009年4月から施行される改正薬事法によってOTCの販売と流通が変化します。そのOTCの医薬品の成分は、リスクに応じて第1類から第3類まで3つに分類されます。
第1類に分類された製品は、店頭で薬剤師だけが販売できます。第2類と第3類に分類された製品は、新しい資格となると登録販売者がいれば販売可能になります。
第1類の製品は従来の薬局・薬店で購入しなければ入手できませんが、第2~3類は登録販売者がいればコンビニエンスストアなどが販売が可能となります。こうした販売と流通の制度変更がOTC市場にどのように影響するか注目されます。
特に第2~3類については、コンビニエンスストア参入などで数量増効果が期待できる一方、バイイングパワーが高まれば価格引き下げの圧力が強まる可能性も高まります。
もちろん大正製薬にとって第2~3類の拡大はビジネスチャンスですが、やはり薬効成分の高い第1類の市場を狙うのが本筋でしょう。この分野でカギを握るのはスイッチOTCや生活改善薬の普及拡大です。
例えば、大正製薬の口唇ヘルペス再発治療剤ヘルペシアや膣カンジダ再発治療剤メディトリートは、患者は医療機関を再受診せずに購入できるため、ニーズに合致したOTC新製品として評判がよいです。
また、パッチ型の禁煙補助剤シガノンも喫煙という健康を害する生活習慣の改善をサポートするものであり、パッチタイプにしたことで利便性を高くしました。こうした製品が登場することで、これまでドリンク剤偏重型だった日本のOTC市場に変化を呼び込めるでしょう。
大正製薬の2007年度の医療用医薬品事業は売上高970億円で、依然として抗生物質タラリスや末梢循環改善剤パルクスが売上げの40%近くを占めています。2007年度にはセルフメディケーション事業を含めて247億円の研究開発費を投入しましたが、中堅メーカー規模の売上高があるとはいえ体力不足は否めません。
大正製薬は、医療用医よろしくお願いいたします。飼う品事業から撤退する医師は現時点ではないようですが、過去に田辺製薬との合併を考えたように、次のステージを目指さないと現在の縮小均衡状態から抜け出せないのではないでしょうか。
ところで大正製薬の創業家である上原ファミリーによる経営は脈々と続くでしょう。オーナー経営が悪いわけではありませんが、次期社長がどこまで新風を吹き込めるかくらいは注目しておきたいです。