透析患者の栄養

 

日本の血液透析患者の身長(メートル)の二乗で体重(キログラム)を割った「体格指数」は一九以下の割合が高く、全体の四〇%を占めます。体格指数一九以下はかなりのやせで、血液透析患者には栄養障害例が多いことを示しています。

d  栄養障害には、患者さんにうつ状態にある人の比率が高現 くヽ食欲がないこと、運動量が少なく、エネルギー消費も

 

  少ないので、食欲も出ないなど、複数の原因がかかわっています。やせは予後不良を示す大切な徴候ですが、これに注目して栄養面の改善につとめる施設はそう多くはありません。

 

 透析患者の蛋白摂取量は平均〇・九六グラム/標準体収キログラムと、目標とするグラム/標準体重キログラムを少し下回っていますが、これには大きな問題はありません。三〇分の散歩など軽い運動を日課にとり入れ、食欲が増すようにしてエネルギー摂取量を増やすようにするべきです。

 

 また、食事からのリン摂取の制限が不十分です。血清リン値は透析後は下がるので、透析前の値を基準にしますが、日本ではこれが五・五ミリグラム/デシリットル以上の患者さんが七〇%以上を占めます。血清リン値が高いままでいると次項で述べる腎性骨異栄養症、動脈硬化の促進につながります。

 

 腹膜透析の合併症 腹膜透析患者の腹膜炎は、六〇回の透析に一回程度の頻度で発症しますが、発症率には施設問の差が大きく、施設による患者さんへの教育と関係があるようです。

 

 腹膜透析では被嚢性腹膜硬化症(腹膜硬化症)という、ときには致死的な合併症が生じることもあります。腹膜が厚くなり、腹膜同士が癒着して腸管は袋にくるまれたようになり、腸閉塞を発症、栄養障害で死に至ります。

 

 腹膜透析の期間と腹膜硬化症の発症率は関係があり、腹膜透析歴三~五年未満で〇・七%、

五~八年未満で二二%、八~一〇年未満で五・九%、一〇~二九年未満で五・八%、一五年以上で一七・二%と腹膜透析歴が長いほど発症しやすくなります。

 

 腹膜硬化症の原因の一つは、腹膜が長期間ブドウ糖を含んだ透析液にさらされたことによると考えられています。慢性の腹膜機能の劣化に加え、ブドウ糖分解産物による炎症が加わり、発症するようです。それ以外に細菌性腹膜炎による急性の腹膜機能劣化が引き金となることもあります。腹膜炎が十分治らないで長びいたときこの病気が発症しやすくなります。

 

 発症を予防するため、五~八年で血液透析に切り替えるべきとの考えもあります。

 

 腹膜硬化症の治療には副腎皮質ステロイドの内服、開腹による腹膜癒着の剥離がありま

す。

『腎臓病の話』椎貝達夫著より