血管を強くするコレステロール

 

 従来はコレステロールが血液中に増えると、血管壁の細胞にどんどんとり込まれてコレステロールが沈着すると考えられてきた。最近は、白血球の一糖である単球が血管壁の中にもぐり込んでマクロファージになり、活性酸素によって酸化変性されたリポタンパク質を食べ、食べすぎたマクロファージが泡沫細胞化することが粥状硬化の原因だと考えられるようになった。ただ、泡沫細胞の中にはコレステロールがいっばいなので、コレステロールがたまることには変わりはない。

 

 コレステロールは本来、細胞膜や男性ホルモン、女性ホルモンなどをつくる重要な栄養素だ。細胞はコレステロールを効率よくとり入れるメカニズムをもっている。日本では脳出血などの出血性の疾患が減って、心筋梗塞脳梗塞などの血管がつまる疾患が多くなってきたが、その理由に、コレステロールが血管を破れにくくする働きが考えられる。血管がボロボロになっていくのをおさえてくれるのが、コレステロールだというわけだ。

 

 「コレステロールが増えて動脈硬化になり、血管がボロボロになる」という従来の見方を「動脈硬化で血管がボロボロになるから、コレステロールが入ってくる」という見方に変えれば、コレステロールが動脈硬化のおもな原因とはいえなくなる。逆に、ボロボロの血管が破れるのを防いでくれているのが、コレステロールだといえるかもしれない。そうすると「血中コレステロールが高いほうがよい」と、これまでとは正反対のことになってしまう。もしそうなったら、これまで高コレステロール血症だとさんざん脅かされてきた人々は、納得できるだろうか?