動物性タンパクが発がん率を高める

 

 動物性タンパクや動物性脂肪は、これまでの調査研究からみても、がんの発生と因果関係が最もはっきりしている食品です。

 

 動物性タンパクや動物性脂肪の摂取量が増加すると、大腸がんや乳がんなど「欧米型」のがんが増えることは、よく知られています。ニュー・インクランドージャーナル・ブーメディスンという世界的な医学雑誌にも、「毎日肉食する人は、週に一回程度しか肉を食べない人に比べて、二倍も大腸がんの発生率が高い」という報告が載っています。

 

 とはいえ、動物性タンパクすべてが悪いというのではありません。ここでいう動物性タンパクとは「アニマループロテイン」、つまり牛、豚、羊など四本足の動物の肉です。

 

 動物性タンパクの悪影響を、長年主張してきたのが、第一章でも紹介したコーネル大学のコリンーキャンベル博十でした。キャンベル博士は、肝臓がんを作りだす発がん物質・アフラトキシンBを投与する動物実験において、エサに混ぜた動物性タンパクの量によってがんの発生率が異なること、動物性タンパクが増えるほど肝臓がんの発生率が高くなることを証明しています。

 

 マウスを使った実験で、動物性タンパク質を五%含むエサを与えたグループと、二〇%含むエサを与えたグループの二つに分け、アフラトキシンBという肝臓がんを引き起こす物質を投与した。その結果、二〇%の高タンパクのエサを与えたほうが、三倍も多く、肝臓がんが発生しました。

 

 なぜ、動物性タンパクががんの原因になるのか。それは、人間にとって分解しにくい栄養素だからです。

 

 肝臓は、「体内の巨大化学工場」と呼ばれ、アルコールや老廃物を無毒化して処理したり、糖質や脂肪、タンパク質を分解・合成して使いやすい形に変えています。このサイクルの中で、もっとも代謝しにくいのがタンパク質なのです。タンパク質が体内に入ると、肝臓で一生懸命、処理しようとして酵素活性が高まる、これがトラブルの元なのです。

 

 タンパクはアミノ酸という小さな単位に分解された後、さらにそれを組み換えて、人間の体で使うタンパクに再合成されます。酵素活性が高まるというと、効率よくタンパクの合成が行われるように聞こえますが、肝臓の処理速度が速くなるにつれ、さまざまな合成酵素反応が促進され、遺伝子のミスマッチが起こりやすくなる。つまり、遺伝子の結合してはならないところが結合したり、正規の配列が入れ替わったりして、これが発がんにつながるのです。

 

 肝臓にはもともと解毒したり、悪い細胞を消去する働きもあります。そのために異物を貪食する免疫細胞も配備されていて、遺伝子のミスマッチなど異常をきたした細胞は、本来ならばここで殺されるはずなのですが、免疫機構がうまく働かなくなれば、発がん率も高まります。

 

 活性酸素のやっかいさはご説明しましたが、動物性タンパクを過剰に摂取すると、こうしたさまざまな要因が重なって、がんになりやすくなります。すでにがんになった人はとくに、魚介類やトリ肉は許容範囲ですが、四本足の動物の肉は厳しく制限する必要があるのです。

がん再発を防ぐ完全食:済陽高穂著より