透析療法の合併症

透析療法は腎臓のはたらきを代用する手段ですが、腎臓の持つ多方面のはたらきには到底及びません。透析開始時より問題となる合併症、また、透析療法が長期に及んだ時に問題となる合併症があります。 透析患者の貧血 透析患者の貧血の主な原因は、腎臓の組織…

 透析患者の心理面の問題

いきなり透析療法を宣告された患者さんはとくに激しい心の動揺にさらされます。 「何かの間違いではないのか」、「仕事が忙しいのに、こんなに治療に時間がかかるとは」などの心の葛藤の時期が一~二年は続き、やがて事態を受け入れる「受容」、「諦め」の時…

 いつ透析を開始するか

いつ透析療法を開始するかについては、二つの考え方があります。一つは、腎機能があまり低下していない時期の導入がよいとする「早期開始」、他方は、腎機能がかなり低下してからの導入でよいとする「後期開始」の考えです。 「早期間始」がよいとする根拠は…

 血液透析か腹膜透析か

血液透析と腹膜透析の比較を示しました。働き盛りで動務のリズムを変えたくない人には腹膜透析が向いています。 保存期腎不全の治療に熱心に取り組んできた人も、外来に通院するのは月一回で、患者さん白身の自己管理の部分が多い腹膜透析の方が向いています…

スターは企業に残らない

ひとつの異様な事実がある。画期的な医薬の創出に中心的な役割を果たした研究者が、何人も会社を中途退職しているという、他の業界では考えられない現象だ。 メバロチン、リビドール、クレストール、プログラフといった超大型医薬の生みの親は、いずれも定年…

「一万五〇〇〇円」の報奨金

グーグル社が、公式の職務に使う時間を八〇%に抑え、勤務時間の二〇%は新しいチヤレンジに充てるべしという社内ルールを定めているのは有名だ。変革期にある製薬業界にこそ、この「二〇%ルール」は最も必要なことであるはずだが、もはやその余裕は失われ…

 厳格化する安全基準

バイオックス事件の衝撃は、臨床試験中の新薬の承認にも大きな影響を与えることになった。特に米国FDΛは極めて審査が厳格になり、承認確率がぐっと落ちた。それまでであれば既存の医薬と少しでも違った点があり、それなりに有効なものならば認可されていた…

 名門メルクの蹉跌

企業の評価基準には、売上・従業員数・株式時価総額・社会貢献度など様々な尺度があり得る。もし、製薬会社の中で「最も尊敬される企業」という一見曖昧な尺度でアンケートを取ったらどうなるか。 恐らく衆目の一致するところ、それは米国のメルク社となる。…

 新技術の限界

もちろん新技術の間発も絶対に必要なことではある。しかし結果から見れば、HTS・コンビケム・SBDDなどは、残念ながら創薬を根本から変えるほどの新技術にはならながった。 コンビケムは多数の化合物を一挙に作り出せるが、多種類のパーツを同時に連結…

難病だけが残った

医薬のターゲットとなりうるタンパク質もすでに検討が進み、有力と見られる標的は少なくなっている。以前は手掘りでも簡単に金塊が見つかった金鉱は、数十年でほとんどを掘り尽くしてしまい、強力な探知機や掘削機械を使ってさえなかなか鉱脈にたどり着けな…

医薬品産業の未来はバラ色

そう信じた人は多かった。筆者の手元のノートには、当時(九〇年代中盤)バイオテクノロジー分野で大きな影響力を誇った、あるジャーナリストの講演記録が残っている。 彼は自信満々に、医薬品産業のバラ色の未来を説いた。今後十五年で、ゲノム創薬をはじめ…

合併の功罪

企業文化・人事制度・給与水準など、何もかもが異なる二つの会社が歩み寄り、新しい会社を作っていくという作業は、社員に膨大なストレスをもたらさずにはおかない。各社で合併が行われていた当時、筆者はたまたま組合役員をやらされていたためあちこちの会…

アメリカの薬価は世界一高い

ただしこのシステムは、弊害ももちろん多い。薬で命をつないでいる患者にとっては、どんなに高い薬価だろうと支払う他はないから、法外な価格がついている薬も存在する。例えば、特殊な白血病の画期的な治療薬として話題をさらったノバルティス社のグリペッ…

数字と感情のあいた

副作用の間題について、科学の立場からの見方を述べてきた。 科学で扱うデータは、死者何人、発生率何%という血の通わない数字だ。しかし実際に副作用で苦しむのは、あくまで生身の人問だ。イレッサの例では「副作用を恐れるばかりでは進歩はない」と書いた…

 「飲み合わせ」という落とし穴

ウナギに梅干し、天ぷらに氷水といった、食べ合わせのよくないものは昔から数多く言い伝えられている。深い科学的根拠はないものが多いとされるが、薬の場合「飲み合わせ」というのは大きな間題を引き起こしうる。専門的には「薬物相互作用」と呼ばれる現象…

なぜ南アでエイズが蔓延したか

医薬の持つリスクに過敏になり、大きな弊害をもたらしている極端な例として、南アフリカにおけるエイズ政策がある。同国は国民の二〇%近くがHIV(ヒト免疫不令ウイルス)に感染しているといわれ、世界で最もエイズの流行が激しい国となっている。何より…

毒と薬は紙一重

抗ガン剤による副作用は、一般にもよく知られているものたろう。抗ガン剤の多くは、DNAを破壊するなどの形で細胞分裂を食い止める作用を持つ。これによってガン細胞の増殖を抑える目的だ。しかしこの時、抗ガン剤は同じく盛んに分裂している正常細胞にも…

バイアグラは偶然の産物

臨床試験で人体に投与して初めて見つかる作用というものは数多い。大半は好ましくない作用が見つかってドロップになってしまうケースだが、中には思いも寄らぬ効果が見つかって、別の種類の医薬として花開くケースもある。 有名なのはバイアグラの場合だ。こ…

特許をめぐる熾烈な争い

創薬研究には科学研究としての側向もあるが、一面厳しいビジネスの世界でもある。学間的にいかに優れた仕事をしても、他のメーカーに一目でも早く特許を出されてしまえば全ては無に帰す。特許こそは医薬品産業の生命線たが、創薬研究に様々な足かせをはめる…

新薬を創れる国は十ヶ国に満たない

晴れて動物実験で有効な化合物が出てきても、またこれで終わりではない。医薬品には様々なレベルでの安全性が求められる。当然致命的な毒性や発癌性があってはいけない。また薬物が体内へ蓄積してしまうと思わぬ副作用につながるから、きちんと一定時問で排…

新薬価制度は実現するのか?

薬価制度改革案に関する中医協での議論は、あくまでも叩き台であり制度論です。厚生労働省や政治のコミットメントをどこまで得られるかが重要です。医薬品業界としては官民対話の場を最大限活用したいところでしょう。日薬連の提案が全面的に受け入れられる…

アリセプトの新しい剤形

エーザイは2007年に米国のバイオベンチャー、モルフォテックとMGIファーマを買収し、オンコロジー(腫瘍学)領域を大幅に強化しました。両者の買収はエーザイが1980年代から米国で取り組んできた抗がん剤の研究開発が、いよいよ実戦段階に入ったことを意味しま…

三菱田辺製薬:三菱グループの医薬事業の中核へ

2007年に田辺製薬と三菱ケミカルホールディングス傘下にあった三菱ウェルファーマが合併し、田辺三菱製薬(英語名はmitsubishi tanabe pharma)が誕生しました。三菱ケミカルホールディングスは田辺三菱製薬の株式56.3%を取得しており、大日本住友製薬と同様に…

我が道を行く小野薬品工業

小野薬品工業は、研究開発に「化合物オリエント」という独自の考えをもっています。化合物オリエントとは、糖尿病とか高血圧というように疾病を定めて新薬を開発するのではなく、新薬候補となる新規化合物を探してそれがどのような疾病に効くのかを突き止め…

新薬承認プロセスの問題点

日本の新薬承認プロセスは、万国共通の有効性と安全性を2つの柱としています。新薬承認審査で中心的役割を担っているのは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会です。新薬承認プロセスは、医薬品医療機器…

硬直性脊椎炎とライター氏症候群に対する主要組織適合性複合体(MHC)の影響

ヒトの主要組織適合性複合体(MHC)は、非自己としての外的抗原と一緒に認識される自己抗原で、個人認識のIDカードとして働きます。免疫反応に際して細胞間の共同作用は、このIDカードによる個人認識を基礎にして行われています。硬直性脊椎炎とライター氏症候…

消化性潰瘍治療剤アシフェックス

主力製品の特許切れが相次ぐ2010年問題への対応は各社共通の課題ですが、とりわけエーザイにとってアリセプトのプロダクト・ライフサイクルマネジメントは死活問題です。またアリセプトのあとの2013年5月に消化性潰瘍治療剤アシフェックス(日本名パリエット)…

アメリカの医薬品市場が拡大

オバマ大統領と民主党の経済対策と金融危機対応が奏功し、米国経済の回復が予想以上に早かったため、マイルドな形での医療制度改革は継続されますが、極端な医療費抑制やアンチ医薬品業界的な政策導入は見送られます。一方で企業向けの法人減税、研究開発減…

統合失調症治療剤ルラシドン

2005年に大日本製薬と住友製薬が合併し、大日本住友製薬が誕生しました。親会社の住友化学が50.1%の株式を保有します。中堅メーカー同士の合併による売り上げ拡大、新薬候補品の数量確保など、規模を追求した合併です。大日本製薬は循環器、中枢神経系、消…

米国の医療サービスが景気に左右されやすい理由

米国の公的医療保険制度は、大きくメディケアとメディケイドに分けられます。メディケアは、連邦政府が管轄する高齢者を対象とした公的保険で、約4000万人が加入しています。加入資格は、社会保険や年金などの受給資格のある65歳以上の高齢者となっています…